弊社はもともと木造在来工法で施工を長年やってまいりました。平成13年の年にある大手ハウスメーカーの輸入住宅フランチャイズに加盟しました。そのことにより木造住宅ツーバイフォーの優れた技術に触れしることができました。ただツーバイフォーは木造在来工法より全てにおいて優れているわけではありません。プロの工務店の社長何人かに質問したことがあります。
「ツーバイフォー工法と木造在来工法ではどちらの工法が優れていますか?」とこのような質問をすると皆さんが決まって「一概にどちらの工法が優れているとは言えない。」
どちらの工法にも長所短所があるからです。
1-1.ツーバイフォーの長所
ツーバイフォーの良いところは、地震に強いこと。気密性が高くて断熱性に優れていること、防火性能に優れているなどの長所があります
1-2.在来工法の長所
在来工法の良いところは、ツーバイフォー工法よりコストパフォーマンスに優れているところです。また、立て荷重に強い、耐久性に優れている、などの長所があります。
2.ハイブリットツーバイフォーの正体
そして私が考えたのは、単純にツーバイフォーの良いところと木造在来の良いところを掛け合わせた構造ができないものかと考え始めました。
ツーバイフォーに在来工法の特徴を取り入れる。この試みは国内でも初めてでした。在来工法にツーバイフォーの特徴を入れ込む技術はありましたが、ツーバイフォーに在来工法の特徴を入れ込んで成立させている工法はありませんでした。
構想に至ってから特許申請に至るまで、約5年間、開発に時間がかかりました。もちろん私だけの力では到底できませんでした。私のことを信じてついてきてくれたスタッフや協力業者の皆さんの協力があって完成にいたりました。
その甲斐あってツーバイフォーの良いところと在来の良いところを両方併せ持ったハイブリットツーバイフォーが出来上がりました。
もちろん先ほど述べたツーバイフォーと在来工法の特徴を全て受け継いでいます。
後からわかったことがもう一つあります。木造在来はツーバイフォーよりも建物構造費用を安く済ませることができます。
実は、ハイブリッドツーバイフォーは、双方の良い特徴を両立しながらコストダウンにもこうけんしていたのです。
ツーバイフォーはもともと材料が高いわけでは無いのですが、大工さんの手間が非常にかかるため木造在来と比較して高額になってしまいます。
在来工法は材料が若干高くつきますが、プレカットが普及しているため大工手間が安くて済むのです。
弊社がハイブリットツーバイフォーの特許の取得を目指した理由
1.特許の効果とは
弊社は滋賀県彦根市に本社を置き、年間で一般住宅を30棟前後、請負をしている小さな工務店です。大手のハウスメーカーとは違いネームバリューもなく信頼や信用もありません。
ただ小さな工務店でも大手ハウスメーカーに負けないような技術力、開発能力があると証明し、信頼と信用を得るために特許取得に着手しました。
特許とは国から今までにない先進的な技術で発明されたものであるとお墨付きがもらえる事になります。
そして、現存する技術より優れていて、全く新しい発想、技術であるということが認められ、そして発明された技術は20年間、発明した者の許可を得ないと使用することができないと言う権利が得られます。
特許の着手から取得までの3年間という長い道のり
2-1.特許の取得まで最初から3回目での否決
実はこの特許に着手してから取得するのに3年の月日がかかりました。
特許申請は初めてで、申請の仕方すらわかりません。まず特許の申請の仕方からどのような形で依頼をすれば良いのかから始まりました。
約1ヵ月がかりで京都の弁理士の方と出会うことができそこから何度もやりとりをして特許の申請をやっていきました。
3年という月日は長いか短いかわかりませんが、打ち合わせを何度もやったのですが、近年ではメールの普及とスカイプがあったので、初回は弁理士先生とお会いしましたが、わざわざ京都に出向く事なく打ち合わせができたのでよかったです。
特許申請は通る保証がないので、申請が拒絶され落とされ続ければ弁理士先生に申請書作成のたびに申請費用を払い続けて行かなければなりません。
後からわかったのですが特許申請には通すためにはやはり経験とコツが必要です。何もかも初めての経験だったので3度も否決になりました。
そのたびに反論の書類を申請し新たに特許性を訴えていくのですが3回目否決を出された時は、もう諦めようかと思いました。しかしここまでやってきたので最後にもう一度原点に返り反論と特許性を改めて申請し直しました。
2-2.特許の取得は、やっぱり4度目の正直でしょ!
実はこの4回目の申請を出したときに、もし今回通らなければ諦めようとも考えていました。
ただ私の考えたハイブリッドツーバイフォーは日本全国どこを探してもなくコストパフォーマンスと性能を充実させた工法であると確信していました。そして画期的な木造工法であると信じ必ず通るという信念はありました。
そして4度目に特許取得に至るわけですが、結局最後の決意で用いた、3度も否決になり、原点に戻るとことがよかったのだと思います。特許庁には特許性があるかどうか判断する審査官がいます。
その審査官がこの技術は特許性があるかどうかを審査するのですが、彼らは今まで申請された特許の事例やその他の文献、資料などから事例を探し、類似するような事例があればそれを理由に拒絶をしてきます。
そして経験の少ない私が取っていた行動はその拒絶内容に対しての反論をしていたのです。
後から解ったことなのですが拒絶に対しての反論をしているとその反論に対してまた審査官が反論をしてきます。結局、反論に対する反論になっていたのですが、ハイブリットツーバイフォー工法の特許技術の本質から逸脱してしまって無駄な反論を繰り返していたのです。
4度目の時は、原点に返り、もう一度ハイブリッドツーバイフォーの本質を見直し反論と言うよりは本質の部分を再度、審査官に訴えかけました。
それを受けて特許性があると診断されたのです。
自分の発明した工法が公に認められた瞬間でした。小さな工務店でもやればできることが証明されたのです。
まとめ
私にとっては長い長い4年間でした。結果として特許取得となりましたが、一般人がすばらしい発明をしていたとしても特許を取得するためには、様々な障害があることを知ることができました。
ただ苦労した分だけ喜びも一入でした。
息子に報告したら、「エジソンのほうがすごいけどね!」と言われました…